平成11.8.20 壱岐坂書房刊行
『篠田悌二郎選集』より。
猫八さんが亡くなってしまい実に寂しい。今年のお正月に久しぶりに寄席で観たばかりでした。正月の鶯は良いものでしたよ。
初めて寄席に行ったのは二十代の頃で、もう何年前だか忘れてしまったけれど、その時に猫八さんが出演されていたのはよく覚えています。
「発情期の猫」みたいなネタがあって、季語的には「春の猫」ですね、あれが面白くて面白くて…。
にゃーん、にゃーん、なんて言っていたのが、最後にはいや~ん、あは~ん、とか艶かしく体を捻りながら猫の鳴き真似をする、いやぁ、実に面白いんです。
寄席は良いとこだと思ったのは猫八さんのおかげでもありました。
息子さんの小猫さんのネタも大好きなので、ますます活躍して欲しいなぁと思っています。
あぁ、寄席に行きたい、歌舞伎も観なけりゃ。
と、思うと、今日もまた、仕事を頑張れる気がします。
『青霧』の続き。
晩涼のものおととほくすみ来る
「ものおととほくすみ」に心地よい風のよう。
しぐれてはおどろきやすき鉢の鮠
鮠だから可愛い。ピュッと素早い。
白日を寒釣に出づなにか恥ぢ
することないもんで、いや、はは。
住みなれて魚族しづかに菖蒲たれ
そこに小さな楽園があるかのようでわくわくする。
骨壼をいだきて腕汗をかきぬ
骨壼の重さ、軽さ。汗もまた涙。
暗き戸をはいりて凧につまづける
そこにある、凧の不思議。句集後半に入りますます悌二郎ワールド。音と表記によって、日常を描いた句も、説明の出来ない不思議が魅力に加わってきています。
わがゆあみ秋日があふれ湯が溢る
風呂は明るく、お湯はたっぷり。
あなをとめスキーの沓の巨いなる
アナと沓デカ。
鳥総松雪追ふ雪の来てうもる
鳥総松の置き方と、下五の「うもる」がすごいなぁと。
ゆきやなぎ人のにほひを厭ひそめ
ゆきやなぎは美意識か。ゆきやなぎは三句あるんですが、どれも良いです。
うちはなど机辺には置き見つつゐる
これ大好き。することも、ないことはないけれど、ぐらいの暇さ加減が良い。
山上湖氷らんとして波さわぐ
波「どうせ凍るならさわがにゃ損損」
水仙の一つの花に霜除す
世界に一つだけの水仙。
『青霧』は終了。後半ほど独自の世界観があって面白いです。ぜひ読んでみて下さい。
じゃ
ばーい