2016.7.9 ふらんす堂刊行
岡野泰輔句集『なめらかな世界の肉』より。
服は小さな町のイオンで買います。店員が寄って来ないことろが良い。お客が居ないのでゆっくり見る事が出来るのも良い。もう正直、服なんかどうでも良い。お金は可能な限り本か旅費か酒に使いたい。時計は持っていないし、スーツは8年前に買ったやつ。靴は雨用と晴用の二足しかなく、破れたら次を買います。眼鏡も一つしかなく、酔っ払って無くすたびに新しいのを一つ買う。
それでは、モテない。もちろんモテない。
俳句は巧い方がよく、お金は無いよりある方がいい、そしてモテないよりモテた方が良い。
僕が好きな人の中で、一番モテそうな人は岡野泰輔さんじゃないかなと。
高そうなアロハみたいなのを着ていて、さりげなく良い時計がちらりと見える。
それ、カッコイイ眼鏡ですね、って言うと…。
そぉ?これね、老眼でさぁ…。
なんて眼鏡を外して眼を細める、そんな仕草や空気感がとても良い感じで格好良い。みんなが泰輔さんのことが好きなので、近くに座りたがり人気者。
モテる人、泰輔さん。
の句集『なめらかな世界の肉』を読んでいきます。泰輔さんを見たことが無い人も、この句集を手に取れば、お洒落感がよく伝わると思います。
朧夜やぼくらはみんな藁の犬
ぼーくらはみーんなー♪
フランスのふらここに乗る女かな
おフランスのおブランコざんす。
全員が前を隠して紫雲英田に
大事なところは大切に。
青饅のむかうを船の行き交へり
どことなく、つげの『ねじ式』を感じます。女医の場面ね。
赤ん坊花より遠いものを見て
何かを見ている赤ん坊を見ている。
みつしりと肉の詰まれる冷蔵庫
強くなりたくば喰らえ。
重力にのつて夜の蛾おりてくる
ずーんと。
母系には尻のきれいなダービー馬
きれいなことは良いことで。
冷房や「無題」が題の絵が並び
冷房がどことなく可笑しくて。泰輔さんは「どことなく」を持ってくるのがすごく上手。
つぎの夜も青田すれすれ滑る夢
すいすいとすれすれを。
銭湯に蟹百匹を放ちけり
がやがや、ごちゃごちゃ。銭湯が良いですね。
ゆっくり読んでいきましょう。
じゃ
ばーい