てこなどうかな⑥

昭和44.4.20 津軽書房刊行
『定本 増田手古奈句集』より

耳が少し遠くなってきた気がする。検査で異常は見られないし、そりゃ10代や20代の頃よりは聞こえなくて当たり前だとも思う。

人の発する1音目がよく聞こえなくて、え?何?と聞き返すとか、聞こえたフリをしたりして過ごしている。おはようが、◯はよう、こんにちはが、◯んにちは、というように、1音目を聞き逃すことが多い。

まぁ、それほど不便はしないんだけど。

逆に、鳥や、虫、風の音なんかは前よりもよく聞こえる気がする。

人の声に興味が薄れているんだろうかと、ちょっと不安ではあるけれど、もう少し様子をみようかと思っています。

六回目、手古奈さんラストです。

牡丹の蕾いよいよ頼もしく

たっぷり咲く形。

蕎麦食うや涼しき海を眺めつつ

ずずっと。涼しき海というのもある。

額の花いよいよ多く滝多く

ここに滝、あそこに滝。

棒稲架の倒れかけたるものに情

立つんだ情、いや稲架か。

菊を観て疲れたる目にバラ赤し

ちかちかと。菊のチカチカと薔薇のチカチカはまた違う、面白い句。

屋上に飛ぶ一蝶も秋暑し

モワッとした屋上の。

花のいろ空にとけゆく夕ざくら

すーっと。透明感と優しさと。

橇の馬しづかに立ちて休みをり

これ好きな句です。馬への視線が良い。

良い句がたくさんある作家です、ぜひ読んでみて下さい。

次回は何やろうかな。

じゃ

ばーい