1990.2 沖積舎刊行
『原石鼎全句集』より
虫を殺すことが苦手です。得意な人はいないでしょうけど、特に駄目です。
最近、僕の目の前で蟻が潰されてしまったのを見てしまったのですが、全身にゾワッ鳥肌が立ち、なんとも嫌な心地がしました。蟻さんを、蟻さんを殺したな、としばらくその人を強く恨みました。
それでも僕も人間でありますから、殺生をしなくてはならない時があります。蚊、ゴキブリ、ムカデ、アブラムシ等。
僕の愛するベランダの鉄線が元気がなく、よく見てみるとアブラムシが…。鉄線ちゃん、今助けるよと鬼の顔をして爪楊枝とキッチンペーパーを持ってアブラムシを無数駆除しました。
こんなんじゃ僕には農業は無理だなと、思いました。何かを育てるということは、他の何かの命を奪わなければ、うまくいかない、それがわかるだけでも植物を育てることは良いことだなと。
では石鼎の続きです。
大正13年
ひらひらと釣れし小魚や夏の草
きらきらと。
昼寝人にバケツの蟹の騒がしき
ガリガリガリガリ。神経質な人は絶対無理だと思います、バケツの蟹。あと夜店の、袋の中のカブト虫、あぁ考えただけでもコワイ…。
色鳥のばさばさとんで窓近し
ヒッチコックの「鳥」が色鳥だったら、嫌だな。
うれそめし柘榴に雲の暗さかな
柘榴は少し暗いところで。
大正14年
あらあぶな石などなげて泳ぎの子
めっ!
その中によき子まじれる泳ぎかな
良い子も、いる。
ささなきのふと我を見し瞳かな
ささなき「素敵なヒゲね」。
大正15年
水仙や一歩一歩に思ふ事
日々色々大変で。
立春の大蛤をもらひけり
立春大吉大蛤。
自動車のをどり着きけり河鹿宿
だいたい大変なところにある、そんな宿。
蟹売をあはれと見るや日の盛
蟹売もつらいよ。
つよ霜に神々達の姿かな
前書が長くて、読んでみて欲しいのですが、要約すると、「痔の手術しました」とのことです。怖かったんだって、患者から見る医者や看護婦の白衣が…。
大正12年、関東大震災(石鼎37歳)
大正14年、父死去、麻痺性痴呆症と診断され、虚子に郷里へ帰ることを勧められる。句会を全て断る。
大正15年、コウ子夫人鎌倉へ。虚子へ絶縁の挨拶。石鼎痔の手術、痛い。
石鼎にとっての激動の大正は終わりです。次回からは昭和に入ります、さて石鼎、どうなっていくのやら。
じゃ
ばーい