素敵な石鼎13

1990.2 沖積舎刊行
『原石鼎全句集』より

虫を殺すことが苦手です。得意な人はいないでしょうけど、特に駄目です。

最近、僕の目の前で蟻が潰されてしまったのを見てしまったのですが、全身にゾワッ鳥肌が立ち、なんとも嫌な心地がしました。蟻さんを、蟻さんを殺したな、としばらくその人を強く恨みました。

それでも僕も人間でありますから、殺生をしなくてはならない時があります。蚊、ゴキブリ、ムカデ、アブラムシ等。

僕の愛するベランダの鉄線が元気がなく、よく見てみるとアブラムシが…。鉄線ちゃん、今助けるよと鬼の顔をして爪楊枝とキッチンペーパーを持ってアブラムシを無数駆除しました。

こんなんじゃ僕には農業は無理だなと、思いました。何かを育てるということは、他の何かの命を奪わなければ、うまくいかない、それがわかるだけでも植物を育てることは良いことだなと。

では石鼎の続きです。

大正13年

ひらひらと釣れし小魚や夏の草

きらきらと。

昼寝人にバケツの蟹の騒がしき

ガリガリガリガリ。神経質な人は絶対無理だと思います、バケツの蟹。あと夜店の、袋の中のカブト虫、あぁ考えただけでもコワイ…。

色鳥のばさばさとんで窓近し

ヒッチコックの「鳥」が色鳥だったら、嫌だな。

うれそめし柘榴に雲の暗さかな

柘榴は少し暗いところで。

大正14年

あらあぶな石などなげて泳ぎの子

めっ!

その中によき子まじれる泳ぎかな

良い子も、いる。

ささなきのふと我を見し瞳かな

ささなき「素敵なヒゲね」。

大正15年

水仙や一歩一歩に思ふ事

日々色々大変で。

立春の大蛤をもらひけり

立春大吉大蛤。

自動車のをどり着きけり河鹿宿

だいたい大変なところにある、そんな宿。

蟹売をあはれと見るや日の盛

蟹売もつらいよ。

つよ霜に神々達の姿かな

前書が長くて、読んでみて欲しいのですが、要約すると、「痔の手術しました」とのことです。怖かったんだって、患者から見る医者や看護婦の白衣が…。

大正12年、関東大震災(石鼎37歳)
大正14年、父死去、麻痺性痴呆症と診断され、虚子に郷里へ帰ることを勧められる。句会を全て断る。
大正15年、コウ子夫人鎌倉へ。虚子へ絶縁の挨拶。石鼎痔の手術、痛い。

石鼎にとっての激動の大正は終わりです。次回からは昭和に入ります、さて石鼎、どうなっていくのやら。

じゃ

ばーい