素敵な石鼎14

1990.2 沖積舎刊行
『原石鼎全句集』より。

欲しい全句集が三冊ほどある。僕の使って良いお小遣いなら月に一冊づつは買えるはず。さてどの順番で買おうか、いやまてよ、飲みに行くのを減らせば二冊買えるかもしれない、とかうだうだ悩みながら、なんとなく買えないままその月が過ぎ去っていきます。

全句集はだいたい一万円ぐらいで、その人の全、句集が読めるのだからその価値にしては安い、安過ぎる買い物だ。

だけれども、一万円は菊水の一升瓶が五本買える。五本あればしばらくは楽しく過ごせるなぁと。

手元に残る本も、残らない酒も、どっちも良いもんです。

さて、石鼎の続きです。

昭和2年

紫や昼の色なる杜若

紫だ。昼には昼の。

火星いたくもゆる宵なり蠅叩

蠅叩を持って見ている火星。

新涼やはたとわすれし事一つ

はたと一つ、また一つ。

ゆすりぬいて大松茸でありにけり

ワオ!

昭和3年

蛙の子泳ぎながらにくれにけり

蛙の子は泳ぐ。

夏の蝶我をめがけて下りて来し

鳥の如くにびっくり。

万巻の洋書を蔵し虫の庵

されど、読めん。

初冬の今より約し歌留多会

早い、わくわくしすぎ。

昭和4年

空をとぶ蝶々壁に映りけり

軽やかな蝶とその影と。

昭和5年

葉牡丹売をことわる声や小さかりし

ごめんね。

田植すんで泥かかり居る薊かな

薊はそんなところに咲いている。

ごうごうと秋の昼寝の鼾かな

秋は秋で、昼寝が最高。

さぁ、なんとまだまだ終わりません。石鼎全句集は7千句以上あるんだもの…。

じゃ

ばーい