1990.2 沖積舎刊行
『原石鼎全句集』より
一年前の自分の写真を見ると、若いなぁ、ちょっと細いなぁ、と思う。三四年年前の写真を見ると肌のツヤが良いなぁ、あれ、痩せてるじゃん、と思う。学生時代の写真を見ると、腰なんかくびれているほど細いけれど、田舎モン丸出しの服を着ている。
俳句の集まりで、田島さんに付いてうろちょろしていると、知らない人から、あら若いわねぇ、いいわねぇ、なんて言われると、田島さんが、いいえ、麒麟は思ったより若くありません、と訂正します。
そうなんです、もう俳句の世界以外では若くはなくなってきました。
とりあえず長生きをするために、ラーメンの汁
をたくさん飲まないところから始めようと思います。
でも、美味いんだなぁ、ラーメンの汁。
では石鼎、なんとラストです。
昭和16年
らんらんとのぼる初日や霜の上
爛々とランランと。
星もなく天地朧に見えにけり
世界がとっても朧だ。石鼎は最初から最後まで朧を愛しつつ恐れる、みたいなところがあります。
初蝶の一つは高く黄蝶かな
黄と答ふ。
穴を出し山蟻ひかり新畳
山蟻は普通の蟻よりこわい蟻。
昭和17年
熟柿食うて大地よごしし昼淋し
グジュグジュが美味い。
昭和24年
懐かしき心起こりぬ青嵐
そして吹く、尺八。
昭和25年
仲秋や梨のうまさも絶頂に
梨うめぇ、時期。
冬の犬あな恐ろしや噛み合へる
石鼎の神経質な部分が出ている句。冬の犬、というのが余計にこわい。
昭和26年
日焼して若き人来ぬ夏座敷
ヤングな、健康な。
秋はあはれ冬はかなしき月の雁
石鼎の心から飛び出したような雁。
石鼎全句集にはだいたい7800句ぐらい入っています。だいたい人に読まれてよく知られているのは1000句ぐらいじゃないかと。
最後まで読んでみて、どうしても初期の句に天才を感じますが、後期にもちょこちょこ何か面白い句があります。
結局のところ、一人の作家は全句集を読むまでは、よくわかりません、一部を読んで作風を決めつけてはいけないなと。
時間かかったけれど最後まで読むことが出来ました。さて、次は何を読もうかな。
じゃ
ばーい