素敵な石鼎20

1990.2 沖積舎刊行
『原石鼎全句集』より

 

一年前の自分の写真を見ると、若いなぁ、ちょっと細いなぁ、と思う。三四年年前の写真を見ると肌のツヤが良いなぁ、あれ、痩せてるじゃん、と思う。学生時代の写真を見ると、腰なんかくびれているほど細いけれど、田舎モン丸出しの服を着ている。

俳句の集まりで、田島さんに付いてうろちょろしていると、知らない人から、あら若いわねぇ、いいわねぇ、なんて言われると、田島さんが、いいえ、麒麟は思ったより若くありません、と訂正します。

そうなんです、もう俳句の世界以外では若くはなくなってきました。

とりあえず長生きをするために、ラーメンの汁
をたくさん飲まないところから始めようと思います。

でも、美味いんだなぁ、ラーメンの汁。

では石鼎、なんとラストです。

昭和16年

らんらんとのぼる初日や霜の上

爛々とランランと。

星もなく天地朧に見えにけり

世界がとっても朧だ。石鼎は最初から最後まで朧を愛しつつ恐れる、みたいなところがあります。

初蝶の一つは高く黄蝶かな

黄と答ふ。

穴を出し山蟻ひかり新畳

山蟻は普通の蟻よりこわい蟻。

昭和17年

熟柿食うて大地よごしし昼淋し

グジュグジュが美味い。

昭和24年

懐かしき心起こりぬ青嵐

そして吹く、尺八。

昭和25年

仲秋や梨のうまさも絶頂に

梨うめぇ、時期。

冬の犬あな恐ろしや噛み合へる

石鼎の神経質な部分が出ている句。冬の犬、というのが余計にこわい。

昭和26年

日焼して若き人来ぬ夏座敷

ヤングな、健康な。

秋はあはれ冬はかなしき月の雁

石鼎の心から飛び出したような雁。

石鼎全句集にはだいたい7800句ぐらい入っています。だいたい人に読まれてよく知られているのは1000句ぐらいじゃないかと。

最後まで読んでみて、どうしても初期の句に天才を感じますが、後期にもちょこちょこ何か面白い句があります。
結局のところ、一人の作家は全句集を読むまでは、よくわかりません、一部を読んで作風を決めつけてはいけないなと。

時間かかったけれど最後まで読むことが出来ました。さて、次は何を読もうかな。

じゃ

ばーい