「あぁ、初昔」

加藤郁乎『初昔』
1998年ふらんす堂

尊敬していた加藤郁乎さんが亡くなってしまった。お目にかかった事がないのが残念で悔しい…。

ちょうど日本橋あたりを歩いているときにTwitterによって訃報を目にして、嫌になってへなへなと座り込んでしまった…。『實』『初昔』『江戸櫻』『晩節』特に近年の句集を愛読していたし『俳の山なみ』や『座職を読むや』『市井風流』が無かったら、梓月、龍雨、知十の俳句を知るまであとどれぐらい遠回りしたかわからない…。
そもそも古い句を読む事をカッコいいと僕が思っている(正しいとは言わないけど)のは郁乎さんが居たからだと思う。

あー、残念だ…。

泣けてきたのでその場でA子から飲み代を借りてふらふらと飲みに行きました…
せっかくダイエットして少し痩せたのにパーです。

会いたいと思ったら動かないと行けない、談志もグズグズしていたら亡くなってしまったし、展宏さんにだって何とか手を尽くして会うべきだったと思うし、木枯さんの句会はどんなに忙しくてもすべて行くべきだった…、いつもしても仕方の無い後悔ばかりをする…。

前に『實』はきりんのへやでやったので今日は『初昔』を読みます。

こぞことし懐ふかき古句とあり

古句の懐、せかせかしない

ゆきをんな夜着より出でて夜着に入る

「ゆきをんな」と書くと実に色っぽい

涅槃図に行き当たりけり昔道

おぉ、涅槃図、とりあえず見て帰る

俳人も小粒になりぬわらび餅

大粒になろうぜ

持合せなければ鮓の句を書せり

カッコいい!!これぞ芸

星祭がさつの星もまぎれてよ

男を感じます

好物はむかしの女秋茄子

良いご趣味です

しぐるるや只事俳句傑作集

「飽きない俳句」ってなんだろう、と思うけど、只事俳句傑作集なんか一つのヒントになるのかなと

四十年前は焼酎あきばはら

結構前、あきばはらって新鮮

親と娘におもはせておく端居かな

いひひと照れ笑いしてダンディ

別嬪の降つて来さうなゆだちかな

「別嬪」とか「ぞっこん」とかよく真似して作ったなぁ、ほとんどうまくいかなかったけど

かげ口は男子に多し秋の暮

中学校のトイレを思い浮かべてしまいました

俳遊の退屈男おでん食ふ

「俳遊退屈男」って時代劇が出来たら、テレビを買う

其角忌やてんで聞かれぬゐなかぶし

聞いてらんねぇなぁ

江戸桜ひねつた癖の買被り

郁乎さんの場合はひねり加減がとんでもない

水貝にわびさびわさび中だるみ

わびさびわさびわびさびわさび、ほらniceなリズム

春時雨われら夫婦はうどんそば

春時雨があったかくやわらかい

それしきの切字に迷ふゆだちかな

それしきとか言えるようになりたい

冬ごもり当風好かぬまでのこと

ぷいっ

考へがあつての馬鹿を冷奴

あんたも馬鹿だね、の男の馬鹿はカッコいい

どうであれ生涯一句初昔

生涯一本のホームランを狙わないといけない、人は皆一句ぐらいしか見ないし覚えてはくれない、それはとても厳しい事だなぁ…

人は意気肴はかつを昼の酒

会社は休みだからジャンジャン

鳥雲に生涯添うてくる者に

愛しいわ

ひやつこい奴に似たりふぉわぐらは

俳人は「ふぉわぐら」と発音しなければならない

とにかく郁乎さんの句を読むのに僕は勉強がまるで足りない、遊びも足りない、二十年すれば、もう少しは読めるだろうか…、幸い郁乎さんにはたくさんの著作がある、生涯飽きる事なく遊べるおもちゃ箱みたいだ。

加藤郁乎さんは素晴らしい大俳人でした

次週は百回記念、何か起こるか起きないか…