2016年6月5日

未来選ぶときも即決早桃掴む

6月5日

フレンチトーストはホテルオークラがインターネットで公開しているレシピ通り作ると、信じられないほどしゅわしゅわでやわやわになる。おお、おまえこそがほんとうのフレンチトースト。はじめまして、わたくしはしがない学生。ナイフで切れ込みをいれるとふすふすと心地よく、天使が眠るのはこういう甘くやわらかなマットレスなのだろうと思う。何が言いたいか。フレンチトーストはきちんとつくると丸一日時間が必要な代わりに昇天するほどおいしい。フレンチトーストの上に焼いたバナナやカリカリのベーコンをのせ、たくさんメープルシロップを浸して食べるのも好きだけれど、この日は水切りヨーグルトと桃を剥いてのせ、メープルシロップと黒胡椒をかけて食べた。
わたしは小学校から中学を卒業するまで、まあ憎たらしいほど可愛げがなくひねくれ者だった。みんなが好きなものが嫌いで、かわいいよりもかっこいいと言われたくて、気に食わないものは全部馬鹿にしていた。女人禁制の秘密基地に「アリを食う」という条件で入ったり(ほんとうに食べた)、廊下を走ったのを注意したら逆上した男子に殴られて、腹が立って椅子で殴り返したりしていた。男子たちからはスーパーミラクルチビウルサメガネリーダー、と呼ばれていた。児童会長だった。目も当てられないほど意地悪で目がつり上がったふてくされた顔をしていて、ぶくぶく太っていて、それなのに以外と繊細ですぐに泣くし、体育が苦手で、絵本を読んでばかりいた。激しいのかおとなしいのかわからない奴だ。とにかく、わたしは自分の小中学校時代を思い出す時結構な勇気が必要である。卒業してからアルバムは一度も開いていない。
あの頃、好きな食べ物を聞かれるとそんなに好きでもないのに「柴漬け」と答えていた。わたしは、ほんとうは桃が好きだった。