2016年8月5日

木下(きのした)に鮎(あゆ)の頭(かしら)の割(わ)り開(ひら)

僕が中学生になったころ、近所にとても珍しい名字をもつ同級生が引っ越してきた。彼女が引っ越してきた理由は誰の目にも明らかだった。彼女の家は、僕の暮らす街に初めてできたセブンイレブンだった。これがいかに僕らを驚かせたかは、開店日に長い渋滞ができたことで、子どもの僕にもじゅうぶんに知られた。
また翌年、僕の家の裏手に、やはり僕の今まで出会ったことのない名字の同級生が引っ越してきた。僕の近所の田畑が急速に売られていき、またたくまにショッピングモールが生まれたのもちょうどその頃だった。裏手にできたピンク色の美容室と、その横に掲げられた表札を見ながら、さほどの感慨のなかったのは、それが二人目の転校生であるためだったろうか、それとも、もはや僕が街の変化に慣れてしまっていたためだろうか。