2016年8月10日

玉川(たまがは)の玉(たま)にも倦(う)みて悲(かな)しめり

巻民代のこと③
巻民代が僕のうちに生まれて一年ほど経ったころ、僕は彼女が次第に肥大してきているのを感じていた。このままでは僕が食い殺されてしまう―これは本当に怖ろしい想像だった。僕は急いで彼女を葬ろうとし、彼女の句集「御遊戯」の上梓をもって追悼を試みたが、意外にも彼女はあっけなく僕のもとを去って行った。