2016年8月20日

村上(むらかみ)に押(お)し戴(いただ)くやはねつるべ

大学に入ってすぐの僕は、図書館で明治時代のホトトギスの復刻版を読むのが習慣だった。投句欄には句とともに作者名が掲載されていたが、作者名の欄に「仝」という字がしばしば並んでいるのを見て、無知な僕は「仝」という人物がいたのだと勘違いしてしまった。俳号だったら一文字でもおかしくないのではないかと思ったのである。
とはいえ、同一人物にしてはあまりにも掲載句数が多いのであらためて「仝」の意味を調べたところ、初めて「仝」が「同」のような意味であることを知った次第である。
だが、すくなくとも一週間程度は、「仝」という俳人が僕のなかにいたことはたしかである。まったく、「仝」は実に力のある俳人で、ホトトギスの投句者としては随一であった。