2016年8月22日

秋山(あきやま)や額(ぬか)(お)し当(あ)つる半(はん)ずぼん

小さいころ、家の近所に「へびのはか」と場所があった。いま思えば大きな石がごろごろしている資材置き場みたいな場所で、そこがどうして「へびのはか」と呼ばれていたのか、蛇を見たという記憶もなくあまりはっきりしない。学校や幼稚園から帰ると僕と兄は桑の木の枝を折り折りいっしょに「へびのはか」に出かけたものである。「へびのはか」はチャンバラごっこの舞台としては最高で、僕らはいつでも「かめんらいだーぶらっくあーるえっくす」や「らいぶまん」になることができた。けれども、僕らはやがてこの手の変身を必要としなくなり、「へびのはか」にも行かなくなってしまった。だから、いまでこそ妙に懐かしく思いだすものの、そこが道路の拡張工事とともに消えてしまったあのとき、本当は格別な思いなんてなかったような気がする。