2016年10月2日

昼の虫立ち上がる時軋む膝

全身麻酔をする手術をした。手術室に入ると最初に脊椎に細い細い管を入れられた。背骨のあたりを何とも言えない感覚が進んで行く。いずい。むずむずするような、それでいて鈍重な感じ。手術後に痛くないようにこの管を通って麻酔がちびりちびちりと入るのだ。脊椎に管を入れ終わると点滴の針に繋がった管に麻酔のはいった点滴が繋がれた。いち、に、真っ暗。
目が覚めたら手術は終わっていて、ベットのまま病室に運ばれる途中だった。ぼんやりしていたけれど名前を呼ばれて返事をした。痛くはない。ほわほわと春の寝足りない朝のようで、直ぐにまた眠った。麻酔がかかっていた間の事は全くわからない。夢すら見ていなかった。きっと麻酔がかかっている間は死んでいたのに違いない。
何日かして、脊椎麻酔の管を抜く日がきた。背中の内側で、何とも言えないざわざわとした感じのものが背中の中のどこかとこすれて軋んでいるように抜けてゆく。
「いんずい」と思わずつぶやいた。

[いずい・いんずい]何とも言えない不快な身体感覚のときに使う。目にゴミが入った時などに「目がいずい」などと使うことが多い。