2016年10月13日

花野より拾う鏡のひとかけら

その話は隣のクラスのマサコが理科の授業の時に先生に聞いたという話だった。13日の金曜日の0時の話。部屋の明かりを消し、合わせ鏡をしてその間に蝋燭を点す。0時になったら鏡の中が異次元とつながる。その時鏡の中に手を入れると悪魔が手を引っ張るというのだ。その時は「そったの嘘に決まってるべ」なんて笑っていた。しかし、しばらくして13日の金曜日はやってきた。マサコは歩いて5分程の近所に住んでいる。決行は今夜。真夜中、マサコは家をこっそり抜け出してきた。こちらもこっそりと部屋に入れ、準備を整える。本当に悪魔が出てきたらどうしよう。こっちに引っ張り出せば無事だが、引っ張り込まれてしまうともう戻れないとかいう話だった。二人ならなんとか引き込まれずに済むかもしれない。そろそろ0時。恐る恐る鏡の間に手を入れてみる。それから鏡に向かって手を入れてみようと試みた。が、しかし。指先は鏡を突っつくばかり。ツンツン、ツンツン。
「はいんねーじゃ」
「・・・はんかくせ~」
それから2人は暫くの間ベッドに顔を埋め声を上げないようにして大笑いした。いつまでも笑いは止まらなかった。ひとしきり笑ったあと、マサコは来たときと同じようにこっそりと帰っていった。
後日気付いたのだが、決行したのは13日の金曜日から14日に変わる0時だったのだ。もしかして13日の0時にやっていたら、本当に鏡の中と繋がったのかもしれない。しかしその試みは二度とされることはなかった。

[はいんねーじゃ]入らないよ
[はんかくせ~(はんかくさい)]ばか・あほ・ちょっと頭悪いんじゃないのの意。この場合は自虐的な「バカだな~」