2016年10月25日

黄落の中に濃くなり血小板

どういう訳か赤い服が嫌いだった。赤い服を着ない事になぜか執拗に拘っていた。ある日伯母が従妹と一緒に訪ねてくるという。以前従妹が着ていたというお下がりの赤いカーディガン、いつも着せられそうになる度に拒んできたが、その日だけは何が何でも着せようとしてくる母。「やンだーーーやンだーーー、あがいのやんだーーーーっ!」泣きながら必死に抵抗する。「ごんぼほってないで早ぐ着なさい!」無理やり袖を通させようとする母。「じゃーーーっ!やんだーーーっ!」大泣きして抵抗している声を聞きつけた祖母がやって来た。「やんや、大変だごと。泣げば山がらもっこァ来るすけぇ」「!!!(もっこァ来る!?おっかない!!)」条件反射的にピタッと泣き止む。不本意ながらもおとなしく赤いカーディガンを着せられた。敗北感がひしひしと押し寄せてきた。

[ごんぼほる]だだをこねる
[泣げば山がらもっこァ来るすけぇ]津軽地方の子守歌の一節。子供が寝なかったり泣いたりするときに「もっこが来るぞ」と言って脅す。「もっこ」は何か恐ろしいものなのだが何者であるかは不明。おばあさんは津軽出身。
[おっかない]怖い