2017年3月4日

春泥の乾ぶウルトラマン人形

保育園が嫌いだった。30年近く前のことだから当然と言えば当然だけど、誰の顔も覚えていない。でも、そこでみんなに好かれようと、頑張っていたのは覚えている。鬼ごっこで、みんなを追いかけるんだけど、私は頭がおかしかったから、おともだちの手のひらをハムに見立てて、「ハム、ハム~!」と言いながら駆け回って、捕まえたおともだちの手のひらを舐めて回った。おともだちは必死に嫌がって、悲鳴を上げながら滑り台や小屋の屋根に散らばって、小さな変質者の襲撃から逃れようとしていたのだけど、私はそれが、みんなが喜んでくれているのだと思って、自分も楽しくなって、ますます追いかけたのだった。不思議と先生に怒られた記憶はない。もしかしたら先生も喜んでくれてると思って、怒られているのに最後まで気に留めなかったのかもしれない。もちろん今はそんなことはしない。
そして、みんなには16時くらいでお迎えが来るのに、私と妹には19時を回っても来ないときが多かった。お迎えが遅い子はつぼみ組という赤ちゃんクラスに集められて、そこで待つことになっていた。いつも、もしかしたら母親は来てくれないんじゃないかという不安にかられていた。こういうお迎えの遅い日は帰り道にある「たこつぼ」というたこ焼き屋さんで夕食をとることが多かった。私はたこつぼが大好きだったし、今も帰郷の度に通ってるが、それでもやはり保育園は嫌いだった。