2017年3月11日

湯上りといふ春灯の使ひ方

モノを売るのが、壊滅的に苦手だ。
学生の頃は多くの俳人の例にもれず書店でバイトをしていたが、余りに不器用すぎて、レジ打ちからはすぐに遠ざけられた。全く、モノを売るレベル以前の話だ。

にもかかわらず新卒入社した東京の会社はゴリゴリの営業会社で、研修からして向いているとは思えなかった。一ヵ月の合宿研修中、全員が何度も大声で罵倒されて、全員が大声で答えてを繰り返しているうちに、それに適応しようと自分の思考を自ら剥がしていくのが分かって興味深かった。一方、座学自体は理論的で、そこそこ関連政策に詳しくなれたし、地下に作られた研修用の工事スペースで自社製品の働きをかなり詳しく学んだ。そちらは中々面白かったし、少しだけ今の仕事の役に立っている。同期は20名ほどいて途中で辞めていく者もいたが、残った者の関係は良好であった。

宿舎の近くに古き良きスタイルの銭湯があって、大抵、ぞろぞろと連れ立っていった。春の夜のぬるい風を受けて、何を話していたかなど全く覚えていないが、心地よさだけが残っている。それはなんとなく俳句の定型に通じるところがあるように思う。