2017年3月15日

人形の家族を運ぶ春の昼

彼女と付き合って一年余りがたったころ、北海道へ旅行に行った。そのころはまだ京都と東京の遠距離恋愛中で、会社のノルマは厳しかったが、直前で何とか契約を上げて、夏休みは9連休をとることができた。これだけの時間を二人で過ごすのは初めてだった。
北海道はどこを訪ねても楽しかったが、小樽でふらりと入った、外国のからくり人形の博物館のことをよく覚えている。縮小版のおもちゃを買うか本気で悩んだ。結局、おもちゃは買わなかったが、代わりに館のロゴをあしらったトートバッグを購入し旅の供とした。

札幌には私の祖母がいて、数年ぶりに会えることを楽しみにしていた。私が彼女を紹介すると、顔をほころばせて、孫をよろしく頼むと彼女の手を握り締めてなかなか離さなかった。彼女は、私のことをどう思っているか祖母に伝え、祖母の家を後にした。ホテルへ向かう車の中で、お祖母ちゃんが温かくて少し泣きそうだったと彼女は言った。

ホテルは小さくて落ち着いたデザインで、居心地がよかった。彼女は備え付けのメモ帳を私に差し出し、何か絵を描いてほしいとせがんできた。もともと彼女は私の描く絵が好きだと言っていて、私は彼女のために絵を描くことが多かった。

5分ほどで描いた絵を彼女はとても気に入り、旅行が終わってアパートに帰ると、色鉛筆で楽しそうに色を塗りはじめた。

私がTwitterのアカウントに使っている絵がそれである。