2017年3月25日

春雨や伸ばし過ぎたるセロテープ

品川営業所時代、新宿の同期と飲んだ翌日の土曜、例の彼女と品川駅で待ち合わせをした。私の生活用品を一緒に買うためであるが、前日メールを続けているうちに、彼女が行きたい場所があるというので、買い物の前に一緒にいくことになった。
品川には原美術館という小さな美術館があって、当時、ヘンリー・ダーガーの展覧会をやっていた。彼女はそれに行きたいということだった。

元々、彼女は年上で、美大の院を出ており、芸術、文化系の知識が豊富で、親しくなってからは、お勧めの本のリストを交換したりもしたのだけど、思わず「教養!!」と叫びたくなるほどリストには差があった。そんな彼女が行きたいという展覧会なので、少し興味を引かれた。もっとも、当時はあまり絵に詳しくなく、絵への興味というより、彼女の気を引くため少し背伸びをしたというのがあったと思う。
しかし、実際直面したダーガーは凄くて、私は初めて絵を見ることを楽しめた。そのとき印象に残った緑色でいくつか俳句を作り炎環に投句した。

帰りに五反田の東急で当初の目的の調理器具と食材を買い込み、そのまま一緒に本郷台のレオパレスへと向かった。私はそのあまりの新婚っぽさに言及してよいものか悩んだが、彼女は他の同期とも会いたがっていたし、一度社宅がどんなところか見たいと言っていたので、何というかその、年上の余裕というか他意はなさそうだった。
レオパレスに着くころにはすっかり暗くなっていた。