2017年4月7日

世界一周してあたらしき花と逢ふ

私がふたたび俳句を作りはじめるのが大学卒業直前の1995年春であり、それ以降の二十数年間に発表したすべての作品を妻である青嶋ひろのに委ねて、選と構成を行なってもらったのが、句集『虎の夜食』である。
私は一度も途中経過を見せてもらうことなく、相談を受けることもなく、ある日いきなりほぼ完成形の原稿を渡された。それに目を通して感想を言おうとしたとき「もうひとつ句集ができた」と言われた。それが昨年夏のことである。
「もうひとつの句集が・・・」と『虎の夜食』のあとがきに書いたのはこれのことだが、タイトルは現時点で未定で、我が家では『B面の虎』という仮称で呼ばれている。
『虎の夜食』を第一句集とするなら、これが第二句集ということになるが、一般的な第一、第二句集の関係とは異なっている。
私にとってこの二作の関係は Prince & The Revolution の「Purple Rain」と「Around the world in a day」という二枚のアルバムを想起させる。1984年、85年にリリースされた6、7枚目のオリジナルアルバムだが、これらは同時期に制作されたと言われている。前者がポップ寄り、後者がアバンギャルド寄りの作風であり、その点も『虎』、『B虎』に対応していると言える。
なお、私がはじめて聴いたプリンスの曲は「Purple Rain」の一曲目「Let’s Go Crazy」である。中学一年生のとき、音楽好きの従兄が遊びに来て聴かせてくれたのである。その後、映画「Purple Rain」をビデオで観て衝撃を受けて以来、プリンスの新作が出るたびに聴いた。
プリンスの表現から感じるものに少しでも触れることのできる言葉を捜して「自由」という語にいきあたった。
「自由」などと言うと明るく気楽な表現を思わせるかもしれないが、他者から与えられたわずかな場所に安住している者が、一見開放的に見える表現を行なうこともある。
私がプリンスから感じるのはその逆である。彼の「自由」な表現とは、他者によってかけられた枷から、自らを解放すべくもがきつづけた果てに得られるものなのである。