2017年4月15日

ガラス器のやはらかく病む焼野原

1995年の春、初めて句会に参加したあとの私は、あまり穏当でない言い方だが「焼け棒杭に火がついた」ように俳句に熱中し、その情熱は俳句作品を読み漁ることにも向けられた。その頃多くの書籍や雑誌を貸してくれたのが森須蘭氏であり、その後現代俳句協会に入会したのも彼女の紹介によるものであった。
もちろん自分でも少なくない書籍を購入した。なかでも俳人や俳句作品を知る上で格好の入り口となったのが夏石番矢『現代俳句キーワード辞典』(立風書房)である。
富澤赤黄男、渡邊白泉、阿部青鞋、三橋敏雄、佐藤鬼房、金子兜太、高柳重信、加藤郁乎、阿部完市、安井浩司、河原枇杷男、攝津幸彦、藤原月彦、夏石番矢、江里昭彦。思いつくままに並べたが、こうした人々の作品をこの本で知り、影響を受けた。私の俳句に文体と呼べるものがあるとするなら、それは彼らの作品を真似るところから生まれたと言ってよいと思う。
残念なこともあった。当時池袋にあった「ぽえむぱろうる」という、詩歌を専門に扱う書店の棚に、私は「俳句空間」(弘栄堂書店)という雑誌を見つけた。一般書店に置かれている俳句総合誌はいずれも保守的で、私の読みたい傾向の俳句はほとんど扱われていなかったが、「俳句空間」は作品も論も斬新で投稿欄も充実していた。何より上記の『現代俳句キーワード辞典』で目にした俳人の名をいくつも見つけることができた。私は、ぜひこの雑誌を講読し投稿してみたいと思った。しかし、私が手にとったのは1993年に刊行された終刊号だったのである。