2017年4月21日

春の水ふたつ交はる更衣室

2013年の春に仕事をはじめたあとすぐに家を探しはじめ、その年の秋頃、隅田川と荒川に挟まれた足立区小台に中古マンションを購入した。内装はほとんど取り外して大幅なリフォームを行ない、転居したのは翌2014年の春である。このときの経験をふまえ、その年の5月に「俳句と住まい」というテーマで勉強会を実施した。これが、私が現代俳句協会青年部委員として基調報告を行った最後の勉強会である。
新居の近くにオープンしたばかりのコーヒー店があり、隅田川にかかる小台橋にちなんでBRÜCKE‏と名づけられていた。店主と話すうちに、私もせっかくこの土地に長く住むのだから、この土地に人を招いて、活気につながるような何かができないだろうか、などと考えはじめた。そして2014年11月、この地域を舞台とする徳田秋声の小説『あらくれ』にちなみ「あらくれ句会」という句会を発足させたのである。
その少し前からなし崩し的にふたたび俳句を作り始めていたが、以前とは俳句に対するスタンスが違っていた。かつて私は、自分自身が俳句と一体化することを理想としてきたように思う。そのようにして自分に憑りつかせた俳句は抜け落ちて、作句を再開しても完全には戻ってこなかった。そして、外側にあるものを眺めるような目で俳句を見るようになっていた。
あらくれ句会は現在休止中だが、できるだけ俳句に慣れていない人に参加してもらうことを望んだ。それが、長く俳句と関わるうちに固定化された俳句観を揺さぶることにつながると思っていた。