2017年4月23日

それぞれの広さを背負ひ春の空

BRÜCKE‏に出入りするようになって、俳句とは異なる領域の表現を行っている人たちと知り合うようになった。小野修さんと出会ったのは、彼がBRÜCKE‏で行った「文学と音楽」というライブの打ち合わせに来たときであった。そのライブでボーカルをつとめた詩人の深澤沙織さんに誘われ「Poetry Circus」という朗読イベントに出演させていただいたのが2015年6月である。「詩と身体」をテーマに、私は小野さんの音楽、Megumi Linoさんのダンスとコラボレーションして自作の俳句を朗読することになった。テーマが「身体」だからと言って、私はことさら身体に関する作品を選んだりはしなかった。俳句を作ることそのものが身体的な行為であるという思いがあったからである。
ただ、俳句の朗読をパフォーマンスとして成立させるのは難しいことだとも思っていた。一作品が短く、しかも独立した世界を持っているため、作品世界へ聞き手を導入することが難しい。そこで、導入部に短い散文を配置し、それに続く句群とあわせてひとかたまりとして受容できるような構成をつくった。この試みは、少なくとも私自身の演じやすさにはつながっていた気がする。
小野さん、Megumiさんの即興によるパフォーマンスは、言葉以外の手段で行われる俳句作品の解釈であり、他者とともに演じるということの心地よさをひさしぶりに感じることができた。
Poetry Circusで試みた散文と俳句作品を組み合わせる構成が、句集『虎の夜食』にも踏襲されたと言ってよいかもしれない。私の俳句は基本的にフィクションで、一句ごとに現実世界と切り離された世界を持たせようとしているが、それが句を並べたときの読みづらさにつながってしまう。散文を導入に使うことは、構成を担当した青嶋のアイデアであるが、私が望む方向とも一致していた。