2017年5月17日

歳月の飛びゆくごとし青嵐

正木さんの俳句が人気を博したのは、既成概念にとらわれない奔放さがあったからだろう。かといって決定的に羽目を外すわけではない微妙なところが、永遠の少女のようなキャラクターと相俟って多くの人の心を引きつけたのだと思う。ふつうの人と同じことはしない。句集の出版も、第2句集だけは富士見書房時代の「俳句研究シリーズ」に付き合ったが、その後はすべて俳句関係の出版社ではない春秋社から出している。ごく親しい人とは通信句会をしたり連句を巻いたりするのだが、あちこちに顔を出すわけではない。酒席でのエピソードには事欠かないが、句会でどうの、という話は聞こえてこなかった。ある男性がお酒を飲みながら「手首が細いね……」と手を持ったら、そのうちに〈蛍火や手首細しと摑まれし〉という句が発表されたそうで、その句の誕生には自分が貢献していると自慢していた。
私たちが生まれた昭和27年は、角川書店の「俳句」が創刊された年である。一緒に年齢を重ねたことになり、創刊60周年記念の年には正木さん、星野高士さんと私の3人で還暦座談会という企画に出させてもらった。宇多さんに「アンタたちが還暦とはねぇ」と、大きなため息をつかせた。