2017年5月31日

新しき街を訪ねむ白日傘

今日で私の連載は終わりである。俳句を始めてからのあれこれを思いつくままに綴ってきたが、40年にもなろうとする日々において、思いがけない出会いがあった。それも人生の楽しみのひとつ。10年ほど前、イスラエルへ行ったときのことである。クムランという死海の近くの遺跡の見学をしようとして入口で待っていたら、遠くから「由美子サーン!」と呼ぶ声がする。誰かと思ったら、何と照井翠さんだった。照井さんも世界中のあちこちへ旅をしている人で、辺境好きということで気が合い、我が家へも何度か遊びに来ている。アフリカの大地溝帯をわざわざ見に行ったような人だから、どこで会っても不思議はないのだけれど、偶々同じ日の同じ時間に、イスラエルの遺跡で遭遇するなんて、やはり驚いた。クムラン遺跡は、洞窟から「死海文書」というヘブライ語聖書の写本が発見されたところで、何となく怪しげな気が漂っている。ここでは、こんな不思議なことがやっぱり起きるんだわねえと翠さんと話したのであった。

それ以外にも、こんなところでこの人に会うなんて!という経験を何度かしているが、人間の出会いというのは本当に不思議なものである。そうした予期せぬ出来事が起きるからこそ人生は楽しい。近ごろは、これまで出会った多くの人々に、そして私にさまざまな機会をを与えてくれた人に心から感謝したいと思っている。
さて、この40年ほどの間にずいぶん贅肉がついた。多分、見えないところにも。心の贅肉は要注意である。5月7日に掲載した写真の元のものが出てきた。このパンツが今もクローゼットの隅に掛かっている。健康を維持するためには20代の体重を5㎏以上増やさないことだという。このパンツはとても入りそうにないが、身体と心のチェックのためのバロメーターにはなるだろう。これを眺めながら、初心を忘れないよう努力していこうかな、と思っているのである。
SPICAの御三人、1カ月お付き合いくださった皆様、ありがとうございました。