2017年7月1日

オレンジのゼリーすくえば透けてゆく

ミーコが死んだ。
私が5才か6才くらいのときだったと思う。
ミーコとは、私がうまれる前から家に住んでいた三毛猫である。人間の子どものことはあまりすきではないらしく、私が家の階段を登ろうとすれば、彼女はどこ吹く風といった様子で階段を駆け上がっていった。
ミーコが亡くなったとき、まだ一緒に住んでいた父の弟が泣いていたのを憶えている。

高校2年の夏休み、部活のため駅から高校まで歩いていると、歩道に一匹のちいさな黒い猫が横たわっているのを見つけた。猫はすでに息絶えていて、その横を通るとき泣けてしまって仕方がなかった。
猫が死ぬと、ひとは泣く。

『レンタネコ』(2012,脚本・監督 荻上直子)は主人公の女性が寂しいひとたちに猫を貸す物語である。手作りのオレンジジュースそのままの色のゼリーは、掬う度にきらきらと透明になってゆくだろう。ゆるくて少し笑えて、やさしい映画だった。

こんな感じで私が観た映画について書いていけたら、と思います。映画を観るということは、現実逃避にすぎないかもしれないけれど、一ヶ月間、映画の旅にお付き合いいただければ幸いです。