2017年8月7日

手枕や梅雨の星座に乎古止点

―――山口優夢さんインタビュー 後編

○前編○

受賞後、なにか変わったことはありますか?

受賞後というか、受賞してすぐ会社に入ってしまったので、そっちの変化の方が大きく。会社に入ってから俳句関係の記事を書くときは、「角川俳句賞受賞」という肩書は大いに使わせていただきました。角川俳句賞は知らなくても角川という名前はみんな知っているので、それらしく響くんでしょうね。
あ、角川俳句賞を受賞してから、他の類似の賞には出さなくなりました。類似の、というのは、何十句かをまとめて一つの作品に出すタイプの賞です。「角川を取っているのだからいいだろう」と周囲に止められたのもあって。なんとなくそんなもんかなあと。句集を出してから田中裕明賞には応募しましたが、かすりもしなかった。もう一回チャレンジしたいなあ。選考委員にもよるけど。

優夢さんにとって、賞とはなんですか?

作品を読んでもらうための装置じゃないですか。一言で言えば。何の賞も取っていない、見たことも聞いたこともない、という人の俳句をまじめに読むほど世間はヒマじゃないと思います。誤解のないように補足すると、自分で他の人の俳句を読むときは、受賞歴とかリアルでその人がどういう人かとか関係なく読むつもりはありますけど(出来ているかどうかは別として)、同じことを他人に求めるつもりはないです。
逆に言うと、「その賞を取っていると読むに値する」と思ってもらえるのは、過去の受賞者の句作活動の結果、賞の水準がある程度担保されているから、ということはありますよね。「この賞を取っている人の俳句なら面白そう!」って。そういう意味で、ありきたりな言い方ですが「賞に恥じない」俳句を作りたいと思ってはいます(出来ているかどうかは別として)。

なるほど。選考委員の俎上から、さらに遠くの人へ届けるために、賞はある。

あくまで一つの方法に過ぎないけど。
あと、プロフィールには受賞歴は全部きっちり書くべきだと思っています。それが賞をもらったことに対する最低限の恩返しかと。受賞歴だらけのたらたらした長いプロフィールがやぼったいとか自慢めいていてうざいとか思うのであればそもそも賞に応募しなければいいわけで。入選とか優秀賞とかをどこまで書くかは個人の裁量でしょうけれど、基本的には全部書くのがいいと思っています(これは出来ているつもり。スペースの問題で書けないときは除いて)。「山口優夢はこの賞も取っていたんだね、そうするとこの賞を取った他の人の俳句も面白いのかも!」と、思ってもらえるようになれば、そのとき本当に賞をくれたことに対する恩返しができるのだと思っています(出来ているかどうk…)。

受賞作家として、山口優夢としてのこれからの作品、楽しみにしています。
お付き合いくださり、ありがとうございました!

 
(贈呈式の日、紗希はチャイナドレス・華子は着物だったのでした!華やか~!)

===
山口優夢 プロフィール
1985 年、東京生まれ。第六回俳句甲子園団体優勝・個人最優秀賞。第二回龍谷大学青春俳句大賞大学生部門最優秀賞。第四回鬼貫青春俳句大賞優秀賞。ブログ「そらはなないろ」や週刊俳句に句集評などを掲載。2008年12月より銀化所属。アンソロジー『新撰21』(2009)に参加、『新撰21』の自分以外の20人を評した評論集『抒情なき世代』(邑書林)。2010年第56回角川俳句賞受賞。句集『残像』(角川学芸出版)。読売KODOMO新聞のツイッターでときどき俳句もつぶやいている。

◆次回は、『しやりり』のこと