2017年8月8日

断面を見せて明るき聖菓かな

―――『しやりり』のこと

応募した賞は、ほかにもある。田中裕明賞だ。45歳以下の人の句集が対象の賞である。
これは、欲しかった賞だ。

私の第一句集『しやりり』は27歳の頃に作った。版元の方にすすめてもらったのがきっかけだったけれど、約10年ぶんの俳句をまとめてみたい気持ちはたしかにあった。
句稿は自選。〈小瑠璃飛ぶ選ばなかつた人生に〉を末尾に置けたのは締切の兼ね合いの偶然で、だからこそ運命ぽくてひっそり嬉しい。関悦史さんに選んでいただいた『俳コレ』の句の内からは半分くらいかも。
タイトルは近しい人に相談した。候補は『初夢』か『ねごと』か『しやりり』など。表記など間違われることも多いタイトルだけれど、気に入っている。
栞は高橋睦郎さん。依頼のお手紙を書くときも、いいよとお電話いただいたときも、書けたから読みあげますねとお電話いただいたときもドキドキした。じぶん以外のひとが目に見えるかたちで関わるとなると失敗できない気持ちになるんですね。もともと栞や序文って要るのかな?と思っていたけれど、睦郎さんに書いていただけて本当によかった。
奥付は2013年12月25日。第5回田中裕明賞を意識していなかった訳ではない。実際、ものすごくハイペースで編みあがった。

結果は、榮猿丸『点滅』と西村麒麟『鶉』のダブル受賞。
どちらも良い句集だけれど、やっぱりちょっとへこみました。
句集を作ったことと、応募したこと、ほかのひとの良い句集があること、もちろん別のことなんですけど、でも応募したからには悔しくもなる。

それでも、以降の選考会で、岸本尚毅さんが、『しやりり』が落ちたのだから…と、賞を取らせるかどうかのラインとして挙げてくださるのがとても嬉しい。爪痕残した感はある。

句集を作ってみて良かったことっていっぱいあるし、応募して良かったこともあるなあ。
受賞しなくても良かった、とは、まだ負け惜しみでも言えないけれど。

『しやりり』まだまだ読んで欲しい句集です。よかったら手に取ってみてください。
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◆次回は、小津夜景さん インタビュー