2017年10月16日

軸にして花鳥はげしき竹の春

比嘉時君洞という俳人がいる。一八八四年に生まれ、一九六〇年に亡くなった。

 牢屋記(一九四五年初夏・石川市)
捕虜の身の何をか生きん初夏となる
人の身の炎天幕舎押し合へる

 良定・生死不明一句
夏雨の消えゆく果てやいづくとも
生き残り恥多けれや秋の暮

石川市は、沖縄県の中部に位置していた。現在は合併してうるま市に名称を変えている。一九四五年六月二十三日が「慰霊の日」、「沖縄忌」されていて、その頃の捕虜収容所での作品である。息子の良定の安否が明らかでなく、何処ともつかぬ遠くへ意識をめぐらせている。