2017年10月24日

ペンが死を月の起伏のあをを欲る

玉城一香という俳人がいる。一九四一年に生まれ、二〇一五年に亡くなった。「荒妙」を創刊し、主宰。風土を詠んだ連作「海神祭」で第三十六回角川俳句賞次席に。

枯芝や基地にとぎれし村の川
収骨の余寒遺品と手榴弾
爆音の去り一碗の葱の香よ
六月二十三日 妻静香の母山口イセ死去
死因それは原爆病と云はれたり
生き堪へて被爆の過去は云はで逝く

「爆音の去り一碗の葱の香よ」には、戦後の日常がある。また、戦後の沖縄で「原爆病」に苦しんでいた人がいたことに、この句を読んで初めて気づかされた。