2017年11月7日

冬ざれにスパイ活動する心地

1944 年 11 月 7 日、ソビエト連邦のスパイ、リヒャルト・ゾルゲの死刑が執行された。彼はドイツの雑誌の特派員をカバー(偽装)して、1933 年から日本でスパイ活動を行った。

毛布から白いテレビを見てゐたり   鴇田智哉『風と円柱』

1941 年、ゾルゲは日本がフィリピン等の南方への侵攻を計画しているという情報を手に入れ、ソビエト連邦へ送った。この情報によりソビエトは日本がソビエトへ侵攻する可能性がないことを知り、兵力を対独戦に集中させることができた。

死角から冷たい枝が伸びてゐる   矢口晃(『天の川銀河発電所』より)

「彼は実はスパイで、国内で得た情報を某国に送っているのではないかと思う」 高校時代、冴えない私のことをこんな風に学級日誌に書いてくれた友人がいた。これは、すごくうれしかった。
スパイだなんてこんな異名はなかなかもらえない。よくある仇名よりもこっちの方が絶対に面白い。今でもそう呼ばれたいときがある。

しかし、ゾルゲのように敵味方両国の上層部や特派員などに広く通じるコミュニケーション能力が私にはない。ソビエトと日本の戦争を避けるよう日本側に対して説得を試みるなど、理知的、冷静沈着に己が信念に基づいて任務を遂行するような賢さ、かっこよさがない。名ばかりのスパイである。

つちふるやあざやかに騙され笑つた   小川楓子(『天の川銀河発電所』より)