2017年11月11日

冬の廊下に何者かゐるらしき

1918年11月11日、第一次世界大戦が停戦した。このことを記念して、ヨーロッパ各地で、今日が祝日となっている。

戦争が廊下の奥に立つてゐた 渡辺白泉『白泉句集』

私は何年経ってもこの句が怖い。無季俳句の中で一番怖い。渡辺白泉の前に現れたそいつは、ずっとそのまま変わらない姿でそこに立って、今でも我々をじっと見ているような気がする。その存在感に圧倒される。

いつ顔を上げても冬の真正面 日隈恵里(『天の川銀河発電所』より)

季節も我々のすぐそばにいる。目に見える形で、また時には目に見えない形で、絶えず我々を見ている。

ともだちの流れてこないプールかな 宮本佳世乃『鳥飛ぶ仕組み』

「ある」ものを「ある」ように詠むのは簡単だが、「ない」ものを「ない」ように、「見えない」ものを「見えない」ように詠むのはけっこう難しい。「ない」もの、「見えない」ものは何となく怖い。「ある」ものよりも怖いかもしれない。