2017年11月18日

冬ざれのざれに震へる足のあり

高校生の頃だった。椅子に座っていたら、右足が突然震えだした。
本当に突然のことで私は何が起きたのかよくわからなかった。
足に何かあったのかと思い、そっと右足を見てみる。
何の変哲もない、ズボンを履いたいつもの自分の足だ。
痛みはないが、右足が確かにピクピクと震えていた。
少しして、震えは収まった。

てざわりがあじさいをばらばらに知る 福田若之(『自生地』より)

「見たままを詠む」も大事だが、「触れたままを詠む」「身体感覚をそのまま詠む」ことも可能である。客観写生にさらに一歩踏み込んだ、もとい、手を突っ込んだ形。

汗の玉あつまつてくる臍のなか 小川春休(『天の川銀河発電所』より)

手に限らず、全身を使ってじわりと感覚を詠む。私も震えながら、体が不思議と汗をかいたのを覚えている。
また同じ震えが右足に来た。
言い知れぬ不安が脳裏をよぎった。
今度はおそるおそるズボンの右のポケットに手を入れてみる。
出てきたのは着信を受けた携帯電話だった。
これが、私が人生で初めて体験した「ポケットの中でマナーモード状態の携帯電話がヴァイブレーションする」感覚であった。