2017年11月20日

うららかや綿菓子の膨らむを待つ

子供の大好きな父だった。
地元の商店街のお祭りで、毎年私は父と一緒に子供達に綿菓子を作っていた。

綿菓子をさはるくちびる桜冷え 西川火尖 スピカ「綿菓子日記」

綿菓子機に砂糖を入れると、少しして、砂糖は回転釜から綿状になって出てくる。
綿菓子機の中で割り箸をぐるりと一回りさせると、綿菓子が巻き付く。
そこから、割り箸そのものを自転させて、綿菓子を箸に巻き付けていく。
箸の角度によって綿菓子の巻き付く場所が変わるので、調整しながら、なるべく丸くなるように巻き付けていく。
綿菓子が顔や髪、服について、全身ベタベタになりながら、一日中作っていた。

ひとちぎりもらふ綿菓子返り花 村上鞆彦(『天の川銀河発電所』より)

「子供達の喜ぶ顔が見たくて作ってるんだ」
父はうれしそうにそう言っていた。私も、子供達の喜ぶ顔を見るのがうれしかった。
綿菓子がだんだん大きくなっていくのを、いい子に待っているときの顔、自分の顔よりも大きな綿菓子を手にして驚き喜ぶ顔、家族と一緒においしそうに食べる顔、どれも子供達からの最高のプレゼントだった。

割箸を祭の端に捨てにけり 小野あらた『毫』

今年は私が作ってみた。
やはり父のようには作れなかった。
それでも、子供達の笑顔は相変わらず、最高だった。