襟巻や畜類に似て人の耳   西島麦南

〈襟巻〉をして首がかくれていると、おのずと〈耳〉に目がいくというものだ。
その〈耳〉が〈畜類〉に似ているという。
畜類の耳と人の耳が似ているとも読めるが、
人の耳の形状やたたずまいが畜類の姿に似ているのだと読みたい。
牛や馬、豚や鶏等のおだやかな丸みと人の耳のくるんとした形が重なってくるだろう。
江戸時代に流行った「畜類め」というフレーズは、「しめしめ」という意味。
襟巻をぐるぐる巻いて、なんだかほくほくしている人の姿も見えてくるようだ。

『西島麥南全句集』(西島麥南全句集刊行會、1983)より。