くらがりにはしごをしまふ躑躅かな  堀下翔

蔵や倉庫のそばに躑躅が咲いている、そんなよく見かける風景も、「くらがり」「はしご」「躑躅」とほかの夾雑物を省略し単純化すると、ある象徴的な光景に見えてくるから面白い。躑躅以外が仮名表記であることも、その不思議な感触を導き出すのに手助けしているだろう。そばにあるくらがりが、躑躅という花の元来包含している暗さをも引き出している。くらがりにしまわれた梯子は、しまわれながら、くらがりの闇の中で、どこか異世界へつながっているようでもある。

「里」2015年12月号(実質2016年4月発行)より。