犀がゐてはじめを曇りがちの春  青本瑞季

犀の色は、雲の色。ずしりとした犀の質感で、春はやってくる。「て」「を」「の」の飛び石を飛んでゆくような危うげな助詞はこびが、曇りがちの春の訥々とした進み具合と重なるようでもある。

「里」2015年12月号(実質2016年4月発行)より。