ふうせんをにぎるこぶしのたかさかな  宮崎莉々香

風船を詠んだ15句連作のうちの1句。すべてひらがなで書かれているところがやや屈折しているものの、内容自体は至極シンプルな俳句だ。確かに、風船を握るときのこぶしの高さって、言われてみれば、気になってくる。上に突き挙げているわけでもないし、かといってだらんと下げているわけでもない。絶妙な高さにこぶしを保って、私たちはいつも風船をにぎる。「にぎる」の動詞も、そのこぶしに力がこもって、句の力点が定まる感じがする。

「円錐」69号(2016年4月)より。