目に入る汗だれよりもわれが好き  加藤静夫

「だれよりもわれが好き」という強い自己愛の気持ち悪さを、「目に入る汗」のなまなましい感覚で描き出した。汗が流れても目をみひらいているこの人の真顔(いや、やさしく微笑んでいるかもしれない)が、なかなかに怖い。でも、この人は「だれよりもわれが好き」と表明できているぶん、強い。含羞を脱ぎ捨てたずぶとさ。

第二句集『中略』(ふらんす堂 2016年5月)より。