また口をあけ直立の蝌蚪となる  山西雅子

蝌蚪は横になって泳ぐもの、という固定観念をくつがえす、現実のなまなましさが、「直立の蝌蚪」。その「直立」という意外性へと、蝌蚪からかけられた梯子が「口あけて」。水面へ向けて、「口をあけ」て何かを欲るからこそ、直立となるのだ。「また」という語を用いたことで、ずっと直立になっているわけではなく、直立になってはもとに戻り、そしてまた……という、この直立している時間の短さがいいとめられた。蝌蚪の動きがよく見えてくる。

角川「俳句」2016年6月号より。