時間より狭き空間つばくらめ  花谷清

科学の視点から詠まれる哲学的な句が特徴の作者、今回も時間と空間を扱っている。
空間という三次元より、ずっとずっと広いのが、時間という四次元の世界。でも、それだけだとただの概念を説明したに過ぎないが、最後に「つばくらめ」が置かれることで、「時間」「空間」という言葉が、現実に対応する生々しいものとして輝き始める。瞬間を切り裂くつばめなら、せまっ苦しいこの空間の世界を飛び出して、四次元の世界を自由に飛び回れるかもいれない。「狭き」と言いながら、「時間」や「つばくらめ」によって、むしろその外の広々とした場所を感じさせている。

「現代俳句」2016年6月号10句作品「諸刃の剣」より。