誰のものでもなくなりて籠枕   片山由美子

掲句に添えられたエッセイには、「使われなくなった籠枕」のことが書かれているので、
〈誰のものでもなくな〉ったのは〈籠枕〉ということであろう。
必需品ではない〈籠枕〉の絶妙な立ち位置がよくあらわれている。
一方で、〈誰のものでもなくなりて〉で切れる読み方もできるだろう。
誰のものでもなくなった、さみしい自分と自由な自分。誰かのものだった頃の自分。
〈籠枕〉の軽さや、通り抜けていく風がそんな自分と向き合うに寄り添ってくれる。

『昨日の花 今日の花』(ふらんす堂、2016)より。