空になほ山の輪郭冬の星   広渡敬雄

すっかり日も落ち暗くなっても山は在り、木々までは見えずともその輪郭は見えている。
夜の闇をなにも見えないと捉えてしまうのではなく、
そして明るいうちは当然見えている、だからこそ意識しない〈山の輪郭〉を捉える描写が巧みだ。
〈なほ〉という言葉に、時間の流れや人間の暮らしに左右されない大いなる山の姿があらわれる。
また、この〈山の輪郭〉と〈冬の星〉は並列とも読めるだろう。
〈冬の星〉もまた、寒空にくっきりと美しく、空に在り続けるのだ。

『間取図』(角川書店、2016)より。