WOW WOWと歌あほらしや海は春   岸本尚毅

〈WOW WOW〉という感嘆詞は特にそれ自体がなにかを語るでもないが、
多くの歌をいろどるフレーズである。それを〈あほらし〉とは身も蓋もない言い様だ。
しかも〈あほらしや〉と高らかに切れ字を使うという大仰ぶり。(鐘の音が聞こえそう)
〈海は春〉という大づかみな下五が楽しく、一句のバランスが取れている。
ただ、歌のあほらしさと大きな自然を対比させた単純な歌批判・自然賛美の句ではないだろう。
あほらしくも楽しく清々しいこの句自体が、こんなにもあほらしさの魅力を物語っているではないか。

「何か」(『俳句 3月号』角川文化振興財団、2017)より。