蜜蜂の重みに花のしたがへる  瀬名杏香

「したがへる」という受動的な動詞が、動の蜜蜂と静の花の、淡くたしかな主従関係をにおわせる。
軽そうに見える蜜蜂を「蜜蜂の重み」と描き直したことで、蜂の命、花のかよわさが際だった。「重み」という感覚からは、春の愁いの気分も漂うか。

週刊俳句2017年4月9日 作品10句「そとうみ」より。〈噴水の其れ及ばざる花に蝶〉の「其れ」、〈果ててなほ綱の乾ける牛合はせ〉の「なほ」など、句の外部に広がる空間的時間的な余白を指し示す語(ことに指示語が多い)を挿入するやり方は、最近の若手俳人にみられるひとつの流行の傾向。なんとなく気分が出て浮遊感があるのだが、輪郭をぼかすことですべての句のトーンが似てきて、誰の句を読んでも同じように見えてくるという難点がある。「噴水の其れ」は「水」では、「果ててなほ」は「果てていま」では、いけないのか。輪郭をたしかに描いた俳句にこそ、その人独自のタッチがあらわれる。