チューリップにやにや笑う星野源  木田智美

星野源という名前の詩的なこと。星の野の源とは。光源氏と向こうを張れそうだ。

そしてたしかに、星野源は「にやにや笑う」。その、にやにやしたゆるさ、人懐っこさが、彼の魅力だろう。チューリップという明るく健康的な花も、彼の笑顔や、ポップな曲調とマッチしている。

週刊俳句 2017年3月26日 作品10句「ウォーターゲーム」より。

ゆるやかにウォーターゲームの水温む
シーソーは錆びた水色ぎいばたん

ウォーターゲームの中の水や、「ぎいばたん」という独自の五音など、自分の目で見、自分の言葉で語ろうとする誠実さが、口語の文体を強靭に鍛えている。

駄菓子屋の前のとまれに春の雪
ふとん屋の看板猫の名はさくら

ウォーターゲーム、シーソー、駄菓子屋、ふとん屋……ややレトロで忘れかけられている者たちの今を切り取ることで、生きることの健気さの感じられる、そんな句たち。