初雪を探しているから黙って  山本美星子

恋人か、友人か、大衆か。しゃべりたがる人の軽薄さを、「初雪を探している」という理由で、「黙って」と強く制している。
空に目をこらして、最初の一粒を強く希求する主体は、世界の変化を逃さないよう、繰り返す日常に麻痺しないよう、自分の感受性を守ろうとしている。この「黙って」の声が聞こえるなら、私の感受性も、まだ機能しているか。

水沢高校の卒業生による小冊子「龍の鱗」(2016.12)の中で、特に、この山本美星子の俳句に引力を感じた。

腫れ物のごときくだもの夏の庭     山本美星子
蛾にも怒られているような気がする。   〃
雨傘の重さを感受性と呼ぶ        〃
黒蟻は影で魂が透明           〃

口語体の率直さを武器に、鋭く今をえぐる作者だ。