番犬の寝相ひらたく天の川  北口直敬

悠久の天の川の前では、いかめしい番犬も、ひらたくなって静物のように眠る。
「寝相」が平たい、という言い方も、ちょっとスナップが効いていて、たのしい。

名古屋中学校・高等学校文学部 句集「野郎共」第1号(2017年4月)より。

広島、猿人、ローマ帝国、世界地図、大きなテーマに挑戦しようとする志や、まだ俳句らしさをじゅうぶんに吸収していないがゆえの、なまの言葉の表れに、可能性を感じた。以下、各作家から一句ずつ。

いま気づいたわ寒雀 おやすみ 北口直敬
広島に尾の無き蜥蜴じつとして  横山栄介
猿人の大地踏み締め星流る  坂下遼介
月今宵髪整へてユーフォ吹く  瀬戸雅裕
てふてふのひらがなめいてとどまりぬ  牛田大貴
この花と決めて冬蝶舞ひ降りぬ  細井淳平
鉄道の軋みを聞きて渡り鳥  波多野俊介
側溝の蝉の骸や新学期  田口青至郎
夕東風や童は砂場はなれつつ  大原宏介
わたぐもの下にぽつりと山眠る  佐藤充俊
川に揺るる入道雲の太さかな  岩畑宙良
東愛知新聞湿りし苺 新家功大
俳句帳余白残して秋の風  小林空
世界地図の人口分布息白し  冨田孝太郎
病棟に弟一人夕若葉  櫻井佑馬
向日葵やローマ帝国滅亡す  石黒真斗
微笑んで涙ぽとりと鳥帰る  中山皓介
男子同士苺食ふてもいいぢやない  水野大雅
校長の頭に落ちる柿一つ  水野結雅