蝶ほどの肩甲骨をねんねこに   神野紗希

赤ちゃんの〈肩甲骨〉の小ささを〈蝶ほど〉と例えた。〈肩甲骨〉は翼に例えられることは多いが、〈蝶〉の大きさに例えるというのはなかなか新鮮だ。〈蝶〉にももちろんいろいろなサイズがあるが、掌におさまるほどのものだろう。
〈ねんねこ〉におさまっている小さな体、その中に仕舞われているさらに小さな〈肩甲骨〉。〈ねんねこ〉という季語の暖かさ優しさがその〈肩甲骨〉の愛おしさ大切さにつながり、ただの発見では終わらない読後感をもたらしている。
いぬふぐりの花びらほどの爪を切る  紗希(「飛べそう」2016.6)》という句もある。
赤ちゃんの爪は、サイズも薄さもまさに〈いぬふぐりの花びらほど〉。この「まさに!」という納得感こそが、〈ほどの〉俳句のミソであると言えよう。

「ユーカリにインコ」(2017.2)より。