風船に飽きてリモコン舐めている   神野紗希

赤ちゃんのいる生活、続く。
赤ちゃんというのは、わざわざ買い与えたおもちゃと同じように(いやそれ以上に)、ティッシュやペットボトル、お菓子の空き箱なんかが大好きな生き物。鍵やペン、財布やスマートフォンなど大人が使っているものにももちろん興味津々。おもちゃと、おもちゃではないものの区別がついていない訳で、裏返せば、彼らにとっては万物がおもちゃ、なのだ。
〈リモコン〉は赤ちゃんが遊びたいものの上位であることは間違いなく、そのニーズに応えるリモコンの形の玩具も数々売られているほど。〈風船〉も赤ちゃんが遊びたいもののまぁまぁ上位であり、季語の役割も果たしつつおもちゃとしてのリアリティもきちんとある。〈リモコン〉という略語だからこそ、〈風船〉との「ん」の脚韻が揃い、内容も調子も楽しい一句。

「飽きて」(2017.3)より。